診療雑感(しまんちゅの耳垢再考)

2012-05-10
アメカル耳鼻科クリニック
真栄田 宗慶

沖縄に戻って約10年経って開業した。戻った当初、本土とのギャップはいろいろあったが、慣れてくると大方は気にならなくなった。
数年前、新聞のコラムに耳垢について書いたことがある。要約すると沖縄県人(しまんちゅ)の耳垢は湿性耳垢の割合が人口比で多いと 言われている。これが問題で未だに苦労のひとつである。と言うのも赤ちゃんはただでさえ動いて処置困難のところに加え、外耳道を傷つけ ないように、粘っこく硬く付着した耳垢を除去するのが難しい。
 前職の中部の病院では、外国人(欧米系)やハーフのかたの受診も多く、ほぼ100 %湿性耳垢であった。ただ比較的軟らかくサラッとしており、粘度はしまんちゅの方が高い印象であった。しまんちゅの場合、湿性耳垢と乾性耳垢が混合してかえって粘度が増しているのかもしれない。

日本人の7 ~ 8 割は乾性耳垢とのことだが、沖縄では逆転している。離島に行くとさらに湿性耳垢の割合が高い印象である。耳垢のことを親が子供に耳のウンコと話していたが、確かに湿性耳垢は色が似ているかもしれない。乾性耳垢ではウンコは想像できないが、耳クソと俗に 言うのでどっちも似たようなものかもしれない。

文献的には湿性耳垢の傾向として、高脂血症や肥満の割合が高くなるとのことである。最近、メタボリック症候群や平均寿命のことが話題になっているが、体質的には湿性耳垢は不利 と言うことになる。
当院は那覇新都心にほど近い場所で、いわゆる転勤族や移住した本土出身の方も多く受診される。当然、赤ちゃんも中耳炎で受診されるが、やはり耳垢は乾性が多い。そして同じ年齢、月齢で受診したしまんちゅの子供と比較して、どうも外耳道の大きさが本土出身の子供たちの方が大きいような印象である。それで耳処置はこれまでより少し楽な感がある。

年齢、個人差で外耳道ひとつとってもサイズや微妙な彎曲の違いはあるが、沖縄にきて成人でも原因のはっきりしない外耳道狭窄症のかたが何人かいた。ちなみに息子も外耳道はやや小さめである。ただ耳垢は私も含めて沖縄では少数派の乾性耳垢である。また、親子とも体毛も薄めで、しまんちゅの男にはまずある手背の毛が私にはない為、以前に酒宴の席で皆にしまん ちゅなのかといぶかしがられた。しまんちゅのルーツである港川人は想像図からすると毛深そうで、おそらく湿性耳垢であったかと思われるが、近い将来にはDNA鑑定から湿性耳垢か乾性耳垢か判明する時代が来ると 思われる。

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